塩分は本当に体に悪いのか

2019年7月22日

塩分と和食には切っても切れない関係があります。
私たちが暮らす日本の夏は非常に湿度が高く、放っておくと食べものが腐って食中毒を起こしやすい環境なのは、皆さんご存じのとおりです。そこで、食べものが腐ってしまう前に発酵させ保存性を高めようと、昔からの日本人の素晴らしい知恵が生まれました。
発酵には塩が欠かせず、アルコールや納豆以外はほとんどのものに塩が必要ですが、周囲が海の日本は海水から塩がいくらでもつくれます。しかも、海水からつくった本来の塩にはマグネシウムや亜鉛、鉄分などが含まれていて、ほかの食品からでは摂りにくい微量元素が摂取できるという長所があります。そうした自然の恵みによって、和食は発展してきたのでしょう。

すべての人が減塩しなくてはならないわけではない

塩分の摂りすぎは体に悪いと一般に言われています。塩分は高血圧を招くという考えがかなり前から言われてきましたが、体に悪いということについては必ずしも正しいものではありません。もちろん、心臓や腎臓などに疾患があったりして、塩分を摂ってはいけない人がいます。しかし、健康な人であれば、少しくらい多く塩分を摂っても血圧にはそれほど関係はないのです。
食塩感受性といって、血圧が塩分に敏感に反応するタイプの人と、そうではないタイプの人がいて、日本人の場合、前者の人の割合は20パーセントほどだと言われています。ですから、食塩感受性のタイプの人は、もちろん塩分の摂りすぎに注意しなければなりませんが、それをすべての人に一律に当てはめるのは、正しくはないのです。
塩味は、少なすぎると食事がおいしくないし、多すぎると体が受け付けません。塩分濃度は私たちの生命に直接かかわるものですから、味覚にも深くかかわっています。味覚に異常をきたす特殊な病気でない限り、簡単に塩分過剰にはなりません。

塩分を減らすことで油と砂糖の摂りすぎを招く

塩、味噌、醤油といった日本の調味料を減らすことで、確かに塩分は減ります。ただし、減塩運動がすすんだために、代わりにドレッシングやマヨネーズ、ケチャップ、ソースなど、油と砂糖を使ったものが増えてしまいました。日本の食卓からは漬けものや味噌汁、ご飯の和食が減り、パンやパスタ、ピザといった洋食を食べる人が増えたのです。
私たち現代人にとって重大な問題となるのは、塩分を摂り過ぎることよりも、さまざまな病気を招く油と砂糖(脂肪と糖)を摂りすぎることです。
健康に気を遣っているはずが、実は健康を害していることに気づく必要があります。